おちらと日記

【酒持田本店】酒蔵見学と日本酒試飲体験【前編】

こんにちは。出雲・湯の川温泉 草菴(草庵)の見習いソムリエール、峠(たお)ゆきえです。

先日、島根県出雲市平田町【木綿街道】にある酒蔵「株式会社 酒持田本店」にて酒蔵見学と日本酒の試飲をさせて頂きました。

◆株式会社酒持田本店◆
島根県出雲市平田町785
TEL(0853)62-2023
酒持田本店公式HP

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私にとって初の酒蔵見学でしたが、皆さまとても優しく、初心者でも分かりやすいように色々なお話をして下さいました。
挨拶の後、酒持田本店の代表取締役社長、持田 祐輔様に酒蔵を案内して頂きました。

酒持田本店の歴史と特徴

酒持田本店は明治10年に創業し、現在まで140年にも亘って出雲杜氏の技を継承してきた老舗の酒蔵さんです。
この酒蔵がある通りは「木綿街道」と呼ばれ、今も古い町並みが残っており、2017年には酒持田本店の店舗や酒蔵、検査場など5棟が国の登録文化財に指定されました。

また、出雲市小境町にある「出雲松尾神社(佐香神社)」では酒造の神、林業や漁業の神、縁結びの神を祀っており、毎年10月13日の秋季神事では酒造りを祝い、参拝客に造りたてのどぶろくをふるまっています。

酒持田本店の名物商品は「ヤマサン正宗」かと思いますが、この「ヤマサン」という言葉、それとお酒のラベルや店舗の最前列の瓦にも見える「ヤマサン」のマークが特徴的です。

ヤマサンの「サン」とは「三方よし」という商人の哲学からとって、売り手(製造業者小売店、飲食店などの提供する側の者)、買い手(買う者)、世間(米を生産する農家)の三方にとってよしとなるよう心掛けてきたそうです。
そのため、吟醸酒から普通酒にいたるまで、全て島根県産米を使って日本酒を造っておられます。

また、屋根に竹が立てかけてありますが、これは年末に新酒が完成した時に立てかけています。
一般的には新酒を絞った合図として杉玉を据え、時間がたってその杉玉が開いていく様子でお客様にお酒の熟成具合を知らせるものですが、こちらの蔵では杉玉ではなく青い竹を据え、だんだんと黄金色になっていき、竹の葉が落ちてくる様子で、熟成具合を知らせるようになっているのも酒持田本店の特徴です。

日本酒の製造工程について

まず、試験場という建物の外観を見せて頂きました。
ここには科学的根拠に基づいてしっかりお酒造りを管理するための機器が揃っています。

その後、日本酒醸造の大まかな手順に沿って蔵内を案内して頂きました。

※ちなみに、日本酒造りは自然相手のお仕事でもあるため、蔵内には全部で7個もの神棚があちらこちらにあるのだそうです!

① 精米

玄米の表層部を削ることで、目標の精米歩合になるまで取り除きます。
この時日本酒の旨味にも雑味にも成り得る成分を削っていきますが、この精米歩合の違いによって様々なタイプの日本酒が造られます。
酒持田本店では自社精米をしています。

② 洗米(せんまい)、浸漬(しんせき)

精米したお米を洗って綺麗にし、水を吸わせていきます。
この作業は後に麹(こうじ)作りの良し悪しにも関わる大切な作業です。

③ 蒸きょう(じょうきょう)

お米を蒸して蒸米にする作業です。
甑(こしき)という機械で様々な種類のお米を段ごとに分け、全部まとめて蒸していきます。

④ 製麹(せいきく)

蒸米に麹菌を繁殖させて麹をつくる工程です。
「一麹、ニ酛、三造り」という言葉がありますが、日本酒製造においてこの麹造りの工程が一番大事と言われているくらい重要な作業です。
麹室(こうじむろ)と呼ばれる冬でも約30度前後に保たれた室内で行います。

麹室

⑤ 酒母造り

次は二週間かけて日本酒の酛になる「酒母」を造る工程があります。
酒持田本店では一つ600Lのタンクを使います。

左は麹室、奥は酒母タンク

汲水(くみみず)に酵母、麹、乳酸を加え水麹を造り、そこに蒸米を加えてから加温操作と冷ます作業を繰り返し行って徐々に品温をあげていきます。
前半一週間は糖化に徹し、後半一週間で酒母の中の酵母を増殖させていきます。
酒母の中の酵母数が最高値になると今度は冷やし、次の醪造りに使われるまで低温で保管されます。

⑥ 醪造りと発酵

次は大きなタンクで醪を作り、発酵させます。
酒持田本店では旧式の6000Lタンクと新式の3000Lタンクを使っています。

先ほどの酒母造りの600Lタンク一つの酒母で6000Lタンク2つ分のお酒を製造できるそうです。
前工程でつくった酒母に、蒸米、麹、水を全部一気に入れるのではなく、三段階に分けて入れるので「三段仕込み」と呼ばれています。
材料を仕込むことを「添え」と言い、

一日目「初添え」
二日目「踊り(酵母の増殖を待つ日)」
三日目「中添え」
四日目「留添え」

というふうに材料を仕込んでいきます。
その後徹底的な温度管理等をしながら必要な日数ほど発酵させていきます。

⑦ 製成、貯蔵、製品

発酵が終わると「上槽(じょうそう)」という醪と液体とを分ける工程に入ります。
この時に貯蔵用の蔵に移るのですが、先ほどまでの蔵よりも暗く涼しくなっていて、出来上がった日本酒を貯蔵するのに最適な環境になっています。
この蔵には冷蔵庫も置いてあったり、床下には酒粕が保管してありました。

上槽の伝統的なやり方では、「槽(ふね)」という大きい浴槽のような容器に、酒袋に入った醪を敷き詰めていくと横の方にある出口から液体のみが流れ出てきます。
また、自動圧搾機で絞る方法や、袋吊りというやり方もあります。

醪を漉す作業が終わると、
澱引き→ろ過→火入れ→貯蔵→澱下げ→割り水→再度火入れ→瓶詰め
という工程を経て、ついに日本酒が完成します。
日本酒によってはろ過や、火入れ、割り水のいずれかの工程をしない場合もあります。

以上が大まかな日本酒製造の流れです。

「並行複式発酵」とは

日本酒は「並行複式発酵」という方法で製造されます。

「並行複式発酵」とは、お米のでんぷんをブドウ糖に糖化することと、酵母がブドウ糖をアルコールに変えることを一つの容器の中で行ってしまうもので、世界の酒造りの中で最も複雑で手間のかかる製造方法であると言えます。
この複雑な工程を得て毎年安定して美味しい酒造りができるのは、色々なことを頭の中で計算しながら、感覚を研ぎ澄まし、何年も修行を積んだ杜氏や蔵人だけです。
そして酒持田本店に来られる杜氏さん曰く、「自分たちは酒造りをしているのではなく麹菌や酵母のお世話をしているだけで、そこがきちんと出来ていれば美味しい日本酒ができる」のだそうです。


今回は、「酒持田本店」の歴史と日本酒の製造工程についてご紹介しました!
次回は試飲の様子と島根における日本酒の歴史についてご案内する予定です。

次回もぜひ、お楽しみに!

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